【亀井岬IFAコラム】米国はドル安を望んでいるのか

2025年7月17日(木)

株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの所属IFA、亀井岬と申します。

金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々からご相談をお受けしております。

専門家や機関投資家が愛用するブルームバーグの専用情報端末を利用し、債券分析やポートフォリオ分析を行っております。現在は数十世帯から数十億円の資産を仲介する証券口座で管理し、資産運用のアドバイスを行っております。

本日は「米国はドル安を望んでいるのか」という内容についてお話させていだければと存じます。最後までご覧いただけましたら幸いです。

またポートフォリオ見直し、債券に関すること、資産承継、投資教育など、ご相談に関しましては以下のフォームよりお申込みいただけましたら幸いです。(ご相談は金融資産1億円以上の富裕層の方々から承っております

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目次

米国はドル安を望んでいるのか

2025年、アメリカの通貨政策をめぐって注目が集まっています。ベッセント財務長官は「強いドル政策」の真意を語り、CEA委員長ミラン氏の「マールアラーゴ合意」のアイデアは波紋を呼びました。

ドル安が進む背景には、政治・経済の複雑な要因が絡んでいます。本記事においては米国政府はドル安を望んでいるのか?その疑問について、私の考えをお伝えさせて頂ければと思います。

・ベッセント財務長官は強いドル政策を望んでいる

・マールアラーゴ合意の可能性について

・結果的にはドル安となっている原因

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ベッセント財務長官は強いドル政策を望んでいる

ドルの強さはアメリカ経済の象徴として語られますが、その意味は一様ではありません。本項目では、ベッセント財務長官が描くドル政策についてお伝えしてまいります。

・財務長官の考えるドル政策とは

・通貨価値としてドル高を望む発言も

1.財務長官の考えるドル政策とは

2025年1月に行われたアメリカ議会の公聴会において、ベッセント財務長官は「ドルが世界の中心的な通貨であり続けることは、アメリカ経済にとって非常に重要である」と明言しました。この発言は、ドルの国際的な地位を維持する意志の表れと受け取られました。

一方で、同年7月のテレビインタビューでは、「ドルの価値そのものと“強いドル政策”という概念は、必ずしもイコールではない」と述べています。この二つの矛盾するように思える発言にはどのような真意があるのでしょうか。

そもそも「強いドル政策」とは、単に為替市場でのドル高を意味するのでしょうか?私はベッセント財務長官が考えるドル政策の核心は、「ドルを世界の基軸通貨として維持するため、信頼性や安定性を高める政策を継続していく」という姿勢にあると思います。

つまり、アメリカが財政・金融の両面で規律ある行動をとることで、世界中の投資家や政府がドルを安心して使い続けられるようにするという考えをお持ちなのではないでしょうか。

このような視点から見ると、さきほどの矛盾する発言についても理解することが出来ます。つまり、短期的に円やユーロなど他通貨に対してドルが上がったり下がったりする為替変動は、あくまで一時的な現象に過ぎず、むしろ長期的に見て、ドルが国際的な信頼を失わず、貿易・投資・外貨準備の中核として使われ続けることこそが、“強いドル”の本質であるという考えを財務長官はお持ちなのではないでしょうか。

2.ドルの価値を重視する姿勢も明確に

その一方で、2025年4月下旬にはベッセント財務長官は「アメリカは今後も“ドル高政策”を継続する」との方針を明らかにしています。この発言は、ドルの価値を国際社会で高く保つことへの積極的な姿勢として受け止められました。

さらに日本政府との通貨に関する協議の場では、「通貨を意図的に操作する考えは全くない」との発言もありました。これはアメリカが為替市場に介入してドル安に誘導しようとする意図がないことを公の場で示したことになります。

アメリカが導入した新たな関税措置(いわゆる「トランプ関税」)の直後の市場が不安定な状況にある中でも、ベッセント長官は「長期的に見れば、やはり強いドルが重要である」という姿勢を変えることはありませんでした。

このような主張から読み取れるのは、短期的な景気対策や為替水準への対応よりも、アメリカの通貨であるドルが国際的に信頼される状態を守ることを最優先しているということではないでしょうか。

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マールアラーゴ合意の可能性について

アメリカ財務長官ベッセント氏が掲げる「強いドル政策」は、単なる為替の上下にとどまらず、ドルの国際的な信頼維持という長期的視点に立っていることについてご紹介しました。

一方で、CEA(大統領経済諮問委員会)委員長スティーブン・ミラン氏が発表した「マールアラーゴ合意」は、国際通貨体制を大きく再構築しようとする野心的な提案として注目を集めました。

しかし、世界市場が過剰に反応するなか、ミラン氏は一転して構想を否定。本記事では、アメリカの通貨戦略をめぐる二人のキーパーソンの発言とその真意を、やさしい言葉で読み解きます。

・マールアラーゴ合意とは

・スティーブンミラン氏が火消しコメント

1.マールアラーゴ合意とは

「マールアラーゴ合意」という言葉は、2024年11月にスティーブン・ミラン氏(アメリカの大統領経済諮問委員会の委員長)が発表した論文の中で使われた新しいアイデアです。

論文のタイトルは「グローバル貿易システムの再構築ユーザーガイド」で、全41ページあります。この提案は、1985年に実施された「プラザ合意」という国際的な通貨協調政策を現代版にアレンジしたものとされ注目を集めました。

ミラン氏の構想には、以下のような4つの柱が含まれています。

  • 各国が保有するドル資産を売却し、計画的にドルを安くする
  • アメリカ国債を100年満期の長期債に置き換えて利払いを減らす
  • 安全保障と経済政策をセットで見直す
  • 最大50%までの戦略的な関税を導入する

このように、アメリカの経済的・政治的な立場を強化することを目的とした総合的な戦略です。

しかしながら、専門家たちはこの提案の実現性について懐疑的でした。理由として例えば、今の外国為替市場は1980年代とは比べものにならないほど巨大で、為替介入でドル安を定着させることのできる規模ではないことが挙げられています。

また、中央銀行の独立性が高まっている現代では、政治が金利や通貨政策に直接影響を与えることは難しくなっているとも言われています。さらに中国の経済力が大きくなった今、1つの大国主導で世界がまとまるのも簡単ではないと思われます。

2.スティーブン・ミラン氏が提案を否定?

2025年5月、スティーブン・ミラン氏はブルームバーグの番組で、自らの「マールアラーゴ合意」のアイデアについて「それは政策ではない」とはっきり説明しました。

彼は、「アメリカは強いドル政策を続けており、秘密裏に何かを進めているという話は事実無根だ」と断言しました。背景には、市場で「この合意が実現するのでは?」という噂が広まり、為替市場が大きく動いたことがあると考えられています。たとえば、台湾ドルは大きく上昇し、1988年以来の上昇となった日もありました。

さらにミラン氏は、「私は貿易交渉には関わっておらず、為替政策の説明は財務長官のベッセント氏が行う」と述べ、自分の役割と政策決定の責任の所在を明確にしました。

最後に彼は、自分の論文について「政策の計画書ではなく、学術的なアイデアを提示しただけ」と強調しました。つまり、「政府として実行しようとしているわけではない」という立場を明らかにしたのです。

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結果的にはドル安となっている原因とは

ベッセント財務長官の発言やミラン氏の火消し発言にもかかわらず、年初からドル安が進行しています。これはトランプ氏の経済・政策リスクが世界市場に波紋を広げていると言われています。

つまりトランプ氏の再登場、利下げ観測、そして財政拡張による不安が複合的に絡み合い、ドル安圧力が強まる構図です。市場はアメリカ自身を「リスク」として捉え始めているのではないでしょうか?

・トランプ氏ひいては米国への不安感

・米国の利下げを織り込み

・減税政策による財政悪化への懸念

1.トランプ氏ひいては米国への不安感

2025年4月に発表された米中間の大規模な相互関税は、世界の金融市場に衝撃を与えました。この関税合戦の影響で、株式、債券、ドルが同時に下落する「トリプル安」という極めて異例の現象が発生しました。市場は「アメリカそのものがリスクになっている」と感じていることを浮き彫りにしました。

さらに懸念されているのは、トランプ政権が、米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を脅かす発言をしているということです。たとえば、FRB議長解任発言は、大統領が金利政策に影響力を及ぼす恐れがあるとされ、ドルへの信頼を大きく損なう要因と考えられます。

トランプ大統領の発言は、単なる政策変更にとどまらず、「世界経済の屋台骨であるアメリカへの信頼低下」を引き起こすという深刻な問題を示しており、投資家心理の悪化を通じて市場全体にネガティブな影響を及ぼしています。

2.米国の利下げを織り込み

米国の金融政策の動向は、世界の市場に大きな影響を与えます。2025年7月初旬時点のデータによれば、市場は年内に複数回の利下げが実施される可能性が高いと予測しています。

この「利下げの織り込み」は、単なる市場の思惑ではなく、エコノミストの調査結果とも一致しています。一部の専門家は、政権主導の不安定な政策によって景気が減速するリスクが高まっているとみており、その結果として、FRBが景気下支えのために利下げを余儀なくされるという見方が台頭してきています。

利下げは一見、株価にはプラスに働く可能性がありますが、通貨(ドル)の価値を押し下げる要因にもなり得るため、いまだ利下げは行われていないものの、先んじてその流れを織り込む形でドル安となっていると考えることも出来ます。

3.減税政策による財政悪化への懸念

もうひとつの大きな懸念材料は、トランプ政権が掲げている減税を中心とした財政拡張路線です。7月には、米下院で大規模な減税・歳出法案が可決されました。

米議会予算局の試算によると、この法案によって今後10年間で財政赤字が2.4兆ドルも増加すると見込まれています。財政悪化を受けて、格付会社ムーディーズが米国債を格下げするという事態も発生しました。格下げは象徴的な出来事であり、投資家の間では、アメリカの財政赤字に対する警戒感が一段と高まっています。

また減税の財源を不安定な関税収入に依存する点も指摘されており、「この政策は長期的に持続可能なのか?」という疑問の声も強まっています。こうした背景から、市場では「ドル安」を招く構造的な要因として減税政策が意識されているのです。

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私にご相談いただくメリット

今回の記事は皆さまのお悩みやご関心に沿うものとなっていたでしょうか?私は冒頭でお示ししましたように、金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々から投資に関するご相談をお受けしております。

以下は手前味噌ではございますが、ご相談の際に特にご好評をいただき「亀井に相談して良かった。」とおっしゃっていただいているポイントでございます。

  • 専用情報端末を使ったリスク分析債券分析
  • 大学での講師経験に基づいたライフプラン作成
  • 蓄積された富裕層に対する資産運用アドバイスの経験
1.専用情報端末を使ったリスク分析・債券分析

私はプロの機関投資家も愛用するブルームバーグという専用情報端末を用いて、様々な分析を行っています

ブルームバーグは相応の費用がかかることもあり、IFAとして活動しているアドバイザーは日本に数千人存在しますが、このシステムを導入しているようなアドバイザーは1%もいないのではないでしょうか。

少なくとも私は過去1人しかお話を伺ったことはございません。ブルームバーグを用いることで、①ポートフォリオがどれだけのリスクを取って運用されているのか ② リーマンショックなどの大きなショックが起こった際の最大損失シミュレーション ③ ご相談者ごとの理想的な資産配分等の分析が行えます。

実際に分析を行わせていただいたお客様からは、「リスクに非常に偏りがあったことがわかった。」など、さまざまなご感想をいただいております。

また債券は一般にはその情報が公開されていることが少ないため、上述のブルームバーグのような専用情報端末を用いた分析が欠かせません。債券の値動き分析、ご要望に合わせた債券の発掘など様々な側面でお役に立つお話をさせていただいております。

2.大学での講師経験に基づいたライフプラン作成

私は2023年4月より2年間にわたって、年に26コマ、私立大学にて『投資教育・ライフプランニング』の講義を行ってまいりました。その経験で培ったライフプランニングの考え方に基づき、ご相談者様それぞれのお立場に合わせたライフプランニング作成を行っています。

3.蓄積された富裕層に対する資産運用アドバイスの経験

野村證券では、シンガポール社費留学時代に数十人の海外プライベートバンカーと面談を行い、海外の運用手法を研究しました。また帰国後、超富裕層に対して資産運用アドバイスに従事したのち、三菱UFJメリルリンチPB証券に転職し、債券知識の研鑽に努め、現在まで16年に亘って富裕層の方々に対する資産運用アドバイスを行っております。

どのようなお悩みでも構いません。よろしければ亀井岬までご相談くださいませ。この度は長文をお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

ご相談

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