【コラム】富裕層における相続対策の優先順位
2023年11月20日(月)
株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの所属IFA、亀井岬と申します。
金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々からご相談をお受けしております。
専門家や機関投資家が愛用するブルームバーグの専用情報端末を利用し、債券分析やポートフォリオ分析を行っております。現在は数十世帯から数十億円の資産を仲介する証券口座で管理し、資産運用のアドバイスを行っております。
本日は「富裕層における相続対策の優先順位」についてお話させていだければと存じます。最後までご覧いただけましたら幸いです。
富裕層における相続対策の優先順位
皆様は相続対策を頭に思い浮かべるときにまず何をお考えになりますか?一般的に相続税を安くすることをまず頭に思い描かれるのではないでしょうか?
私は同時に相続対策として、「納税資金の準備」「争族とならないための準備」の二つも重要であると考えています。
・納税資金を準備する
・争族とならないように準備する
・相続税を減少させるための取り組みを行う
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納税資金を準備する
納税資金を準備することは相続対策において優先順位の高い項目であると考えています。理由としては相続はいつ生じるかわからず、その不透明なタイミングに向けて、必ず納税方法のめどをつけておく必要があるからです。では納税資金の準備においてどのようなことに気を配っていくべきでしょうか。
・資産の流動性に気を配る
・資産を増やすことを試みる
- 1.資産の流動性に気を配る
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実際に相続が起こった場合、問題になりやすいポイントとして相続資産の流動性という問題があります。特に被相続人のポートフォリオにおいて自社株が大きな割合を占めている場合には問題になりやすい項目と言えるでしょう。
また同様に不動産を相続する場合においても、相続税をどのように支払うか頭を悩ませる相続人の方は少なくありません。タイミングよく不動産を売却して、その資金から相続税を支払うといったことも出来ないわけではありませんが、相続手続きが円滑に進み、かつ不動産が納得行く価格で納税期限までに売却出来る必要があります。
一方で株式など有価証券は自社株や不動産に比べて流動性が高い場合が多く、売却価格を気にしなければ換金という観点では計算がしやすい資産であると思います。
しかし株式を中心とした有価証券は不動産に比べて値動きが大きい場合もあり、換金したいタイミングで価格が大きく下がっていることも想定されます。
以上のような状況を踏まえて、相続税の負担が大きいと言われる日本においては万が一の際の流動性に優れた資産として円預金の割合が多い富裕層の方が多いように感じています。
- 2.資産を増やすことを試みる
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相続税を減らすために様々な対策を考える富裕層の方も多くいらっしゃいます。一方で私としては「資産を増やす」という側面にも注目していただくようにお話しています。
理由として相続税を減らすための取り組みは、税制改正などの影響でその取り組み自体が無意味になってしまったり、税務署との見解の相違で、結果的に相続税を予想以上に支払う必要があるなど、被相続人の手でコントロール出来ない要素が多いからです。
一方で例えば資産運用を通じて資産を5億円から10億円に増やすことが出来れば、相続税として5億円を支払ったとしても(支払いたくはないですが)資産運用を行う前の5億円は相続人に残すことが出来ます。
ただ資産5億円の富裕層が資産を増やすことには目を向けず、相続税を減らすことばかりに目を向けているとどうやっても次世代に相続させることの出来る資産は5億円未満となります。
当然ながら資産運用において5億円が10億円になる保証はどこにもありません。しかし資産運用を全く検討しないというのももったいない考え方であると私は思います。
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争族とならないように準備する
次に「争族」という観点ですが、これを避けるためには以下のようなことが重要ではないかと考えています。
・思いを言葉で直に伝える
・思いを書面で残しておく
- 1.思いを言葉で直に伝える
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相続人は資産をもらう立場であり、自らの口で相続問題について被相続人に切り出すことは、憚られるのではないでしょうか。
一方で被相続人の側からしても自らの資産を生前から相続人に伝えることに抵抗をお持ちの方も多く、家族であっても相続に関する考え方の共有が、積極的に行われている事例は少ないように感じます。
しかし被相続人の資産が預貯金や有価証券など流動性が高いものではなく、自社株や不動産など流動性に難がある資産を含む場合には、より丁寧に相続問題と向き合う必要があると私は考えています。
例えば自社株という相続資産においては次期社長となる相続人に株式を集約することが多く、結果として相続資産額に偏りが出る傾向があります。
自社株の評価額が大きい場合、不公平感が出る可能性も考えられますが、一般的に自社株は安易に売却することは出来ないこと、また現金の相続額は他の相続人と比べて少なくなる場合も多いことから、逆に自社株を中心に引き継ぐ相続人にも不満がないわけではありません。
しかし相続は何度も起こる問題でははなく、ニュースで取り上げられるようなお話でもないため実状が把握しにくい側面があります。
だからこそ資産を築いてきた被相続人自らが、自分の相続に対する考え方を自らの言葉で相続人に伝えていくことがまず肝要であると考えています。
- 2.思いを書面で残しておく
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被相続人の思いを書面で残すための一般的な方法として「遺言証書」があります。この遺言証書を残すことは直接相続人に思いを伝えることと同様、大切な要素であると考えています。
特に遺言証書の中で遺言執行者を事前に決めておくことで、相続割合が多少偏ったものとなる場合においても、相続人同士の冷静な話し合いの手助けとなると感じております。
理由として一般的には遺言執行者は、士業の資格を持った先生と呼ばれる人たちが指名されることが多く、相続人としても一定の安心感を得られることが多いからだと考えております。
また重要なことは被相続人が生前より相続人と十分な意思疎通を図ることで、遺言証書の中身が寝耳に水といったお話とならないようにすることであると思っております。
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相続税を減少させるための取り組みを行う
一般的に税制に則った形で税金を少なくするための取り組みを「節税」と呼びます。私自身は資産管理会社や不動産、保険の活用などの一般的なスキームのお話の前に、まず以下のお話をさせて頂いております。
・お金を使っていく
・贈与を検討する
- 1.お金を使っていく
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当たり前のお話ですが、物として残らず、何かに消費された場合には相続税をかけることが出来ません。ご飯を食べたり、旅行に行くなど消費を積極的に行うことで減少した資産には相続税をかけることが出来ません。
お金は使うためにあり、亡くなる瞬間に誰が一番資産を持っているかを競うものではありません。どれだけ幸せな人生を送ることが出来るか、そのための手段として一定のお金が必要であるということです。
一方で資産運用を併用することで、資産自体を減らさずに消費を行える可能性を追求出来ます。例えば資産5億円の方が資産運用を行わないまま消費を続けると減少の一途ですが、資産運用を通じて7億円に増やすことが出来れば、相続のタイミングで、資産運用を行わない場合より多くの資産額が残せることとなります。
- 2.贈与を検討する
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贈与は一族が支払う税金を少なく出来る可能性があると同時に次世代へ資産が移転することで、次世代がしっかり資産を活かすことも出来るため、積極的にお話しています。
例えば円預金5億円を残して相続が行われた場合、その円預金は被相続人の代では使われなかった、つまり被相続人がうまく活用できなかった資産であると言えると思います。
例えばその半分でも次世代に早い段階で承継されていれば、トータルの税金が少なくなっていた可能性もさることながら、資産を受け継いだ次世代が自分たちの人生を豊かにする手段として有効活用出来た可能性もあります。
当然ながら人生において何が起こるか分かりませんから、一定の金額を被相続人が確保しておくということは必要であると考えます。
しかし必要以上の資産を積極的に次世代に贈与することで、日本経済の活性化も含めて、次世代の人生を豊かにしてくれるかもしれません。
一方で次世代が若いうちから多額の資産を保有することに抵抗をお持ちの富裕層も少なくありません。それも当然のことであると思います。正解はございませんが選択肢の一つとして贈与についてお話させていただいております。
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