【IFAコラム】富裕層の資産運用(一括or積立におけるシミュレーションの注意点)

2024年1月24日(水)

株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの所属IFA、亀井岬と申します。

金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々からご相談をお受けしております。

専門家や機関投資家が愛用するブルームバーグの専用情報端末を利用し、債券分析やポートフォリオ分析を行っております。現在は数十世帯から数十億円の資産を仲介する証券口座で管理し、資産運用のアドバイスを行っております。

本日は「富裕層の資産運用(一括or積立におけるシミュレーションの注意点)」についてお話させていだければと存じます。最後までご覧いただけましたら幸いです。

目次

富裕層の資産運用(一括or積立におけるシミュレーションの注意点)

最近ではアドバイザーやファイナンシャルプランナーにライフプランニングをお願いするのではなく、ご自身で行おうとされる方も増えてきている印象です。

金融庁が資産運用シミュレーションのページを作成するなど、国として資産運用のプランニングを後押ししているように思えます。

個人的にはライフプランニングに精通した担当者を見つけることがオススメだとは思いますが、ご自身でライフプランニングを行う場合に、注意すべきことについて本日はお伝えさせていただきたいと思います。

・マーケットは上昇し続けるのか?

・資産運用シミュレーションは税金を考慮していないことが多い

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マーケットは上昇し続けるのか?

まずライフプランシミュレーションを行う際に問題となってくることがパフォーマンスのシミュレーションです。

このようなシミュレーションを行う際に⚪︎年間、年率⚪︎%で右肩上がりの運用が出来たと仮定してパフォーマンスの計算を行うことが一般的ではないかと思います。

ではそのようなシミュレーションを行う場合に注意すべきポイントとはどのようなものでしょうか。

・積立投資は出口が肝心

・10年下落し続けるマーケットに耐えられるか

1.積立投資は出口が肝心

上述のようにパフォーマンスシミュレーションにおいては、基本的に⚪︎年間、複利計算で⚪︎%の利回りで右肩上がりの運用が出来たとすると、資産が⚪︎億円になるといったレベルの資産運用シミュレーションしか出来ません。

しかし実際にはマーケットには大きな波があり、過去の10年が順調に年率5%で増えていたからといって、次の10年も同様に年率5%で順調に増えていくとは限りません。

相場に波がある場合に特にシミュレーションの影響受けると私が考えているのが積立投資です。

積立投資においては極論、運用をやめるタイミングに投資している商品が最高値であれば、その途中は安ければ安いほど良い投資手法だと考えています。

二つのマーケット状況を想定して説明していきたいと思います。

一つ目は30年という間、積立投資をインデックスファンドに毎月10万円を行う場合に、相場が29年間ずっと低迷し、最後の1年間とてつもない上昇を記録して、結果的にファンドの基準価格が出口のタイミング10万円になった場合です。

もう一つのパターンは先ほどとは異なり、30年間ずっと年率5%で右肩上がりに上昇し続けた結果、先ほど同様基準価格が出口のタイミングで10万円となった場合です。

ではこの二つのパターンにおいて、どちらの方がよりシミュレーション上増えていたでしょうか?答えはもちろん29年間低迷していた方が最終的なパフォーマンスは比べ物にならないほど良い結果が出ているはずです。

それでは29年間ずっと年率5%で増えていたのに、出口までの残りの1年間で10分の1までマーケットが急落してしまった場合はどうでしょうか?想定していたパフォーマンスを得られないことは明らかです。

このように資産運用のシミュレーションと言うのは、あくまで毎年順調に出口にいたる最後の最後まで、複利計算で⚪︎%で資産が成長するという前提で、計算しているに過ぎません。

しかし実際のマーケット状況を勘案した場合、結果は想像したものには全くならない可能性もあると言うことには注意が必要です

2.10年下落し続けるマーケットに耐えられるか

先程のような29年間マーケットが低迷したという想定はあまりにも極端ですが、例えば5年間マーケットが低迷していたとして、皆さんはその間ずっと積立投資を続けられるでしょうか?

SNS上ではマーケットが低迷している時ほど積立投資のチャンスだと言うような書き込みも見られます。しかし直近の10年の間で1年程度マーケットが低迷していたタイミングはあったでしょうか?

私がアドバイザーになってからの約17年間で、感覚的にマーケットが低迷したと感じた最大期間は4年程度です。しかもそれは10年以上前のお話です。

つまりこの10年で投資を始めた投資家の中で、1年以上のマーケットの低迷を経験した方はほとんどいないのではないでしょうか。

そして資産運用シミュレーションでは把握出来ないことが、このように低迷したマーケット環境となった場合に、投資家がどのような気持ちになるかということです。

あまりご経験がないかもしれませんが、下落が継続する、あるいは継続しないまでも反発が一時的で停滞期が継続するようなマーケット状況は悲惨です。投資をやめたくなる方も多くなってくるのではないでしょうか。

SNSで最近、リーマンショックのタイミングで投資を始めていたらS&P 500に投資をしていても5倍になっていますというような書き込みを見ました。

確かにその通りです。しかし実際に2008年に投資を行っていたとして、そのどん底のタイミングで大切なお金のうちのいくらの割合をS&P 500に投資しようと思えるでしょうか?

株価が下落していく中で購入した場合に、さらに下がって半分にはならないだろうか?相場が低迷すれば低迷するほど、このような負の気持ちがどんどん強くなっていきます。

長期投資の複利計算で何億円の資産になるというシミュレーションは、あくまでそのような相場低迷期に訪れる投資家の強烈な負の感情を克服出来るかどうかは考慮していません。

そして長期の相場の低迷を乗り越えたとしても、本格的な上昇が必ず訪れるか確約は全くありません。

資産運用のシミュレーションというものは、もしかするとその資産額になっているかもしれない、そういったレベルの計算に過ぎないということは肝に銘じておくべきだと思います。

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資産運用シミュレーションは税金・インフレを考慮していないことが多い

もうひとつシミュレーションをする際の観点として抜けがちなのが、税金とインフレの観点です。

・売却時の税金を加味したシミュレーション

・インフレを考慮したシミュレーション

1.売却時の税金を加味したシミレーション

2024年から新NISAがスタートしています。非課税枠が最大1800万円与えられることが非常に注目されています。しかし、富裕層にとってはこれだけの投資枠で資産全体の運用をカバーすることは難しいことが実状です。

つまり富裕層の資産運用においては新NISAではなく、課税口座での運用が中心となる結果、投資利益の多くの部分が税金の対象となる可能性が十分考えられます。

そのため資産運用のシミュレーションにおいては、課税後、手取りベースでいくらのパフォーマンスになるのかということを把握することが非常に重要であると考えています。

例えば1億円の証券投資をネット証券で30年間行い、年率5%で上昇した場合、投資資産は約4.32億円となることがシミュレーションから分かります。しかし実際にその値上がり分の約3.32億円すべてが使えるわけではないということです。

このように最終的な手取りベースでの資産額を意識したシミュレーションを行うことが肝要であると思っております。

2.インフレを考慮したシミュレーション

まさにこの記事を書く前日に学生たちにインフレについて講義してきたところです。昨今では様々な物の値段が上がっており、インフレというのを身近に感じるようになりました。

例えば年率2%のインフレが30年間継続した場合に、30年後の1億円の価値は計算上いくらになるでしょうか?答えは約5521万円まで下がってしまいます。

つまり円資産を全く何も運用せずに利息ももらえない状態で30年間ほったらかしてしまうと、その資産の評価額は約55%程度にまで下落すると言うことです。

では資産運用のシミュレーションを行う際に皆さんはこのインフレ率をどこまで考慮して、パフォーマンスのシミュレーションを行っているでしょうか。

インフレが身近になってきたこれからの時代だからこそ、これから20年30年といった長期スパンでのインフレ率を予想した上でシミュレーションを行うことは重要なポイントだと考えております。

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