【IFAコラム】富裕層における債券投資:円安時に投資を行うべきなのか?

2023年12月25日(月)

株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの所属IFA、亀井岬と申します。

金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々からご相談をお受けしております。

専門家や機関投資家が愛用するブルームバーグの専用情報端末を利用し、債券分析やポートフォリオ分析を行っております。現在は数十世帯から数十億円の資産を仲介する証券口座で管理し、資産運用のアドバイスを行っております。

本日は「円安時に債券投資を行うべきなのか?」について私の考えをお話させていだければと存じます。最後までご覧いただけましたら幸いです。

目次

【IFAコラム】富裕層における債券投資:円安時に投資を行うべきなのか?

現状の1ドルが140円から150円の為替水準において、円をドルに換えて債券投資を行うことに二の足を踏まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本日は現状の円安と言われている為替水準で債券投資を行うことについて、2つの観点からお話していきたいと思っています。

・利息が得られないことを機会損失と捉えるかどうか

・債券購入において円高のタイミングでも円貨での支払金額が少なくなるとは限らない

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利息が得られないことを機会損失と捉えるかどうか

利息の累積による損益分岐点為替の推移

前提:10年満期のクーポン5%のドル建て新発債(債券価格100)に投資

債券価格は満期まで一定購入時の経過利息はゼロ、税金を考慮せず

損益分岐点為替について小数点第三位を四捨五入

・債券を購入後、保有期間に応じて受け取ることが出来るのが利息(クーポン)

1.債券を購入後、保有期間に応じて受け取ることが出来るのが利息(クーポン)

現状のような為替水準から円高になるまで債券投資を待ちたいと考える方にとって、機会損失と成り得るのが債券の保有期間に応じてもらえる利息です。

上記図表は、為替が150円のタイミングで10年満期のクーポン5%のドル建て新発債(債券価格100)に1500万円(10万ドル)投資を行い、毎年5000ドルの利息(税金を考慮せず)を10年間受け取った場合に、債券購入金額(円)に対して、損益分岐点となる為替水準を表にしたものです。

この表から分かることは、債券を保有することで継続的に獲得できる利息のおかげで、保有期間とともにドルベースの資産額が増加し、結果的に債券購入金額(円)に対する損益分岐点となる為替水準が円高方向に低減していることです。

あくまで債券価格が100のまま変わらないという前提ではありますが、1年後には債券評価額10万ドルに利息5000ドル(税金考慮せず)が加わるため、ドルベースの評価額が10万5000ドルに増加しています。

結果として債券購入金額1500万円に対して損益分岐点となる為替水準は、1年後には1500万円÷10万5000ドル=142.86円まで円高方向に低減しています。

つまり円高になると思って債券投資を1年間待ったとしても、上記前提条件においてはドル円が1ドル142.86円以上に円高方向に推移しなければ150円のタイミングで投資を行っていた場合の方が、円ベースで利益が出ていた可能性が示唆されています。

また同様に2年、3年と利息を受け取ることで債券が満期となる10年後には損益分岐点為替が100円(税金考慮せず)にまで低減していることが分かります。

このように債券を保有した瞬間から獲得できる利息の効果は、円安水準で債券投資を行う際に検討すべき項目であると考えています。

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債券購入において円高のタイミングでも円貨での支払金額が少なくなるとは限らない

先ほどの説明では常に債券価格を100と仮定して、損益分岐点為替についてお伝えしておりました。しかし実際には債券価格はマーケット動向により常に上下するものです。

ここからは円高になるのを待って債券投資を行おうと考えた結果、実際に為替水準が円高となった場合においても、注意すべきポイントについてお伝えしていきたいと思います。

・円高時にはアメリカの長期金利が下落している可能性がある

・為替の値動きと債券の値動きどちらが大きいか

1.円高時にはアメリカの長期金利が下落している可能性がある

先ほど同様に1ドルが150円の為替水準はあまりにも円安ドル高の水準であるため、円資金をドルに交換してドル建て債券投資を行うことを躊躇した投資家がいたとします。

3か月後、1ドルが135円まで10%の円高ドル安水準となった場合に、その投資家は債券投資を3か月前に行わなくてよかったと100%言えるでしょうか。

答えは「No」です。3か月間に円高ドル安となった理由によっては、3か月前に投資を行っていた方がよかった場合もあり得ると考えています。

一般的にアメリカの長期金利が下落する局面では、日本とアメリカの長期金利差が縮小することから円高ドル安になる可能性が指摘されています。

今回135円と円高ドル安水準となった理由がアメリカの長期金利の下落によるものであった場合、投資対象としていたドル建て債券はドルベースでの購入価格が上昇していることが想定されます。

つまりこの債券の上昇幅によっては、3か月前に1ドル150円のタイミングで円をドルに換えて債券投資を行っていた方が、トータルでの円貨の支払い金額を低く抑えて、同じ債券に投資出来た可能性があります。

2.為替の値動きと債券の値動きどちらが大きいか

では具体的には金利と債券価格の値動きの関係性についてどのように考えればよいのでしょうか。一般的に金利変化に対する債券の価格感応度を示す値を「デュレーション」と呼びます。

そしてこのデュレーションが長いほど債券は金利変動に対して感応度が高くなり、債券価格の変動がより大きくなると言われています。ではデュレーションが長い債券とはどのようなものでしょうか?

まず第一にクーポンが同じ債券であれば、一般的には満期までの残存期間が長い債券ほどデュレーションは長くなります。 そして第二に、同じ残存期間であれば、クーポンが低い債券ほどデュレーションが長くなります。

例えば、普通社債において同じ会社のクーポン5%の10年満期の社債Aと20年満期の社債Bが存在した場合、20年満期の社債Bの方がデュレーションが長くなります。

そして同じ20年満期の社債Bと、20年満期のクーポンゼロの米国ストリップス債とでは後者のストリップス債の方がデュレーションが長くなります。

つまり為替が3か月で10%円高ドル安に推移した場合でも、投資対象としていた債券のデュレーションの長さによっては為替の値動き以上に債券価格が上昇する可能性が考えられ結果的に債券投資を3か月前に行っていた方が良かったケースも存在すると言えます。

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結論として

以上、債券投資において、円高のタイミングで投資を行うことが出来たとしても、それが必ず良い結果につながるとは限らない理由について、ご確認いただけたかと思います。

実際の投資アドバイスにおいては、今後の為替見通しと金利見通しを勘案した上で、世界中の債券の中からお客様それぞれのライフプランに合わせて、ご提案を行っております。

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