【亀井岬IFAコラム】トランプ関税がインフレに与える影響と富裕層の債券投資

2025年2月25日(火)

株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの所属IFA、亀井岬と申します。

金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々からご相談をお受けしております。

専門家や機関投資家が愛用するブルームバーグの専用情報端末を利用し、債券分析やポートフォリオ分析を行っております。現在は数十世帯から数十億円の資産を仲介する証券口座で管理し、資産運用のアドバイスを行っております。

本日は直近複数のご相談者様からお問合せいただきました「トランプ関税がインフレに与える影響と富裕層の債券投資」というご相談についてお話させていだければと存じます。最後までご覧いただけましたら幸いです。

目次

トランプ関税がインフレに与える影響と富裕層の債券投資

グローバル経済の動向は、富裕層の資産運用や海外投資の戦略に直結する重要な要素です。今回の記事では米国の関税政策がインフレにどのような影響を与え得るのか、そしてそれが1億円以上の資産を有する投資家の皆様にとってどのような示唆を持つのかを、専門家の見解とともに解説いたします。

・トランプ関税がインフレに影響を与えるのか

・トランプ政権下での債券投資戦略について

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トランプ関税がインフレに影響を与えるのか

トランプ政権下で実施された関税政策は、従来の経済理論を超える複雑な影響を市場に与えています。一般には関税の引き上げはコストプッシュ型のインフレ圧力を生むと考えられてきました。

しかし実際の市場動向は必ずしもその通りではありません。富裕層投資家が資産運用戦略を再検討する上で、こうした関税政策がインフレにどのように作用する可能性があるのか、そのメカニズムを把握することが重要です。

ここでは、最新のデータと市場分析をもとに、トランプ関税がインフレに及ぼす影響について詳しく探っていきます。

・2018年の米中貿易戦争における主張の食い違い

1.ベッセント財務長官は2018年はインフレが抑えられたと主張

トランプ政権の財務長官に就任したベッセント氏は、1月16日のアメリカ合衆国上院財務委員会にて「トランプ第1期の大規模な新関税を含む経済政策において、数十年ぶりの実質賃金上昇が実現したが、インフレ圧力は生じなかった。」

と述べ、関税が直ちに物価高騰を招いたわけではないと主張しています​。次にボストン連銀の資料(The Impact of Tariffs on Inflation – Federal Reserve Bank of Boston)について紹介します。

ここでは2018年から2019年にかけて、アメリカは中国からの輸入品のおよそ3分の2に平均で約20%の関税をかけたことが記されていますが、この関税が消費者物価全体に与えた影響はあまり大きくありませんでした。

具体的には2018年に新たに課された関税によって、アメリカの「コアPCEインフレ率」(食品やエネルギーを除いた物価上昇率)は、わずか0.1~0.2%ポイントしか上がらなかったと推計されています。

関税が導入された後もアメリカのインフレ率は2%前後にとどまり、大きな変化は見られませんでした。この結果が「全体として関税率が上がっても、インフレが急激に進むことはない。」という財務長官の考えを裏付けるものとなっています。

2.実証研究では関税コストが消費者に転嫁されたと主張

では逆の意見はどうでしょうか。シカゴ大学の実証研究(What washing machines can teach us about the cost of tariffs | University of Chicago News)を紹介したいと思います。

ここでは2018年にアメリカが大型洗濯機に20~50%の関税をかけた結果、海外から輸入された洗濯機だけでなく、アメリカ国内で作られている洗濯機の値段も上がり、お店で売られる洗濯機の価格は約12%上昇したと記されています。

さらに興味深いことに関税がかからなかった乾燥機についても似たような値上がりが確認されました。つまり関税の引き上げがそのまま消費者が支払う物の値段に跳ね返っていることが分かりました。

また研究では洗濯機や乾燥機の市場で新たに生まれた108件の雇用に対して、年間で15億ドルもの余計な費用が発生しており、1件あたり約82万ドル(約1億円弱)のコストが消費者にかかっていることが述べられています。

またNY連銀のMary Amitiの実証研究(The Impact of the 2018 Tariffs on Prices and Welfare – American Economic Association)でも2018年の対中国関税の費用の多くが米国の消費者や輸入企業が負担していることが示されました。

これは外国企業がドル建てで設定する輸出価格が下がらなかったため、米国への輸入にかかる費用がそのままアメリカ国内の物価上昇につながったことが理由と言われています。

その結果、2018年末までにアメリカ全体で、実質的に毎月約14億ドル(年間約168億ドル)の所得損失が生じたと計算されています。

このようにトランプ政権が主張する「関税は外国が負担する」という単純な考えは通用せず、実際には関税によるコストの多くが国内の物価や私たちの生活費に影響を与えていることが、これらの研究から示されています。

3.結論

多くのエコノミストは関税が物価(インフレ)を押し上げる効果はあるもののその影響の大きさは輸入品の割合によって決まると考えています。

たとえば、PICTETの市川さんの記事(トランプ関税の読み方)ではすべての輸入品に一律10%の関税をかけた場合、単純な計算で全体の物価が1~1.3%上がることになると書かれています。

また一般的にはさらに為替の変動や消費者が他の商品に切り替えるなどの対策によって、その影響はさらに小さくなる可能性が考えられます。

一方で関税率を大幅に上げたり、関税の対象を広げたりすると無視できないほどのインフレ圧力が生じることもあります。FRBボストンの試算(The Impact of Tariffs on Inflation – Federal Reserve Bank of Boston)をご紹介します。

ここでは「中国からの輸入に60%、その他の国からの輸入に10%」という非常に高い関税をかけた場合、米国のインフレ率が1.4~2.2ポイントも上昇する可能性があると予測されています。

つまり関税とインフレの関係は「どの程度か」という問題であり、少しの関税引き上げなら物価への影響は小さいですが、極端に関税を上げれば大きなインフレ圧力となる、という結果が過去の事例や理論から示されています。

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トランプ関税における債券投資戦略について

トランプ政権の下での政策転換は、債券市場にも大きな変化をもたらしています。金利環境や規制の変動により、従来の投資戦略では捉えきれない新たなリスクとリターンのバランスが求められています。

富裕層投資家にとって、安定した資産運用の一環として債券投資戦略の見直しは、資産保全と成長を両立させるための鍵となります。

本セクションでは、トランプ政権下での最新の債券市場の動向と、具体的な投資戦略のポイントを解説し、今後の投資判断に役立つ情報を提供します。

・インフレの見通しをどのように考えるか

1.関税がインフレを押し上げ、長期金利が上昇

まず米国の関税引き上げが輸入コストを増大させ、インフレ期待の上昇を通じて、長期金利が上昇した場合を考えてみましょう。長期金利が上昇すると、既存債券の価格は下落しやすく、全体として債券市場に逆風が吹くことになります。

さらに関税によるコスト高が企業収益を圧迫し、景気減速のリスクも増大するため、会社の信用力低下を通じて社債に下落圧力がかかる可能性も検討する必要があります。

こうした環境下で、富裕層が検討出来る債券投資戦略はどのようなものが考えられるでしょうか。例えばですが、金利上昇による価格下落リスクや、景気悪化リスクに備えた防御的なアプローチを検討することとなります。

①デュレーションの短縮
デュレーションとは金利変動による債券価格の感応度を示す指標として使われます。債券の残存期間が短いほど、金利変動に伴う価格変動リスクは小さくなります。

そのため金利上昇局面では、満期が短い社債を中心に組み、ポートフォリオ全体のデュレーションを低めに保つことが選択肢として検討されます。

②金融セクターの投資適格社債(IG)への投資の検討
銀行や保険などの金融機関は、金利上昇局面で利ざやの拡大が期待出来ます。関税の直接的影響を受けにくい業種と言えるかもしれません。

③ハイイールド社債(HY)の比重抑制
インフレと金利上昇は企業の借入コストを押し上げ、信用リスクの高いハイイールド社債はスプレッド拡大や価格下落のリスクにさらされる可能性があります。

過去の米中貿易摩擦局面でも同様の影響が確認されたこともあり、格付けが比較的高い銘柄や短期債を中心に選定することが一つの選択肢となります。

④米国債の組入れ
米国債は地政学リスクや景気減速懸念時に安全資産として機能すると言われています。そのため米国債としてポートフォリオに組み入れリスクヘッジとして活用することが検討されます。

ただしインフレ環境下では米国債の利回りも上昇する可能性があるため、価格上昇効果は限定的になるかもしれない点に注意が必要です。

2.関税がインフレに影響を与えず、長期金利が安定

関税が上昇しても、結果的に消費者が払う値段にはあまり影響しない場合を考えます。つまり企業が増えたコストを自分たちで吸収するか、他の理由で物価があまり上がらない状況です。

このような場合は短期金利はあまり変わらず、結果的に長期金利も大きく上昇しない可能性があります。またもし関税の影響で経済の成長が減速した場合にはFRB(アメリカの中央銀行)が金利を下げるなどの対策を取るかもしれません。

その結果、債券の利回りが下がり、今持っている債券の値段が安定したり上昇する可能性が検討されます。また企業の信用リスクが低くなり、社債投資にとって良い状況になる可能性があります。

こうした環境下で、富裕層が検討出来る債券投資戦略はどのようなものが考えられるでしょうか。

①長期債への投資を検討

金利上昇リスクが小さい環境では、長期債への投資も積極的に検討できます。金利が低下すれば長期債の価格は上昇し、キャピタルゲインが期待できるほか、横ばいの場合も高いクーポン利回りを長期間確保できるメリットがあります。

現在、米国の投資適格社債は約5%程度の利回りを提供するものも散見され、インフレ懸念が低ければ満期10年以上の社債も有力な選択肢となります。

②ハイイールド債の組み入れ検討

金利が低水準に留まり、信用市場が安定している場合は利回りの高いハイイールド社債への検討も行えるかもしれません。景気が大きく悪化しないなら、信用度の高いBB格中心のHY債を選び、個別銘柄だけでなくETFやファンドで分散投資することが考えられます。

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私にご相談いただくメリット

今回の記事は皆さまのお悩みやご関心に沿うものとなっていたでしょうか?私は冒頭でお示ししましたように、金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々から投資に関するご相談をお受けしております。

以下は手前味噌ではございますが、ご相談の際に特にご好評を頂き「亀井に相談して良かった。」とおっしゃっていただいているポイントでございます。

  • 専用情報端末を使ったポートフォリオ管理
  • 継続的なライフプランニング
  • 蓄積された富裕層に対する資産運用アドバイスの経験
1.専用情報端末を使ったポートフォリオ管理

私はプロの機関投資家も愛用するブルームバーグという専用情報端末を用いて、様々な分析を行っています。ブルームバーグは相応の費用がかかることもあり、IFAとして活動しているアドバイザーは日本に数千人存在しますが、このシステムを導入しているようなアドバイザーは1%もいないのではないでしょうか。

少なくとも私は過去1人しかお話を伺ったことはございません。ブルームバーグを用いることで、①ポートフォリオがどれだけのリスクを取って運用されているのか ② リーマンショックなどの大きなショックが起こった際の最大損失シミュレーション ③ ご相談者ごとの理想的な資産配分等の分析が行えます。

実際に分析を行わせて頂いたお客様からは、「リスクに非常に偏りがあったことがわかった。」など、さまざまなご感想を頂いております。

2.継続的なライフプランニング

ライフプランニングは一度行えば終了というたぐいのものではありません。とりわけFIREを行われたご相談者様は金融資産を元手に生活を設計する必要がある中、元手となる金融資産が運用により上下するため、ライフプランニングも定期的に行う必要が生じます。

私自身は転勤することもなく生涯のアドバイザーとしてお客様をサポートさせて頂く傍ら、大学ではライフプランニングの授業を年間26コマ行っております。お客様それぞれのお立場に合わせたライフプランニングを考えるお手伝いも行わせていただいております。

3.蓄積された富裕層に対する資産運用アドバイスの経験

野村證券では、シンガポール社費留学時代に数十人の海外プライベートバンカーと面談を行い、海外の運用手法を研究しました。また帰国後、超富裕層に対して資産運用アドバイスに従事したのち、三菱UFJメリルリンチPB証券に転職し、債券知識の研鑽に努め、現在まで16年に亘って富裕層の方々に対する資産運用アドバイスを行っております。

プロフィールへ

株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル

金融商品仲介業者等  関東財務局長(金仲)登録番号 第314号

個別相談ではご紹介する商品等の勧誘を行う場合があります。各商品等にご投資いただく際には商品毎に所定の費用(スプレッド)や諸経費等をご負担いただく場合があります。 又、各商品等には価格の変動等による損失を生じる恐れがあります。

金融商品を対象とした投資には、金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標にかかる変動を直接の原因として価格が変動するリスクにより、損失を被ることがあります。また、信用リスク、流動性リスク、権利行使期間・契約解除期間の制限などを原因としても、損失を被るリスクが伴います。外貨建て投資では、為替相場の変動により、円貨で計算した場合に投資元本を割り込み損失を被ることがあります。

各商品等へのご投資にかかる費用(スプレッド)等およびリスクについては、当該商品等の契約締結前交付書面、目論見書、お客様向け資料等をよくお読みになり内容について十分にご理解ください。

本記事は、ご投資家の皆様に対して、投資に関する一般的な情報の提供を目的として作成されたものであり、記載されているデータまたは意見や予測は金融商品の売買の勧誘等の意図は一切含むものではありません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、その正確性を保証するものではありません。過去のデータは必ずしも将来の動向を示唆するものではありません。将来的に期待したリターンが得られるとは限らず、実際の収益を確約するものではありません。

本記事はある特定の投資目的や金融ポジション、あるいは特定のニーズにこたえたものではありません。将来的には予想通りの結果とならない可能性があります。本資料で取り上げられている投資対象や投資戦略の適正については投資アドバイスを受けることをお勧めします。投資利益あるいは投資対象の価格・価値は変動する可能性があり、投資収益が投資額を下回る場合もあります。

投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。

所属金融商品取引業者等

楽天証券株式会社

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あかつき証券株式会社

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