【IFAコラム】富裕層の資産運用(債券価格の決定要因)

2024年2月28日(水)

株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの所属IFA、亀井岬と申します。

金融資産を1億円以上保有される富裕層の方々からご相談をお受けしております。

専門家や機関投資家が愛用するブルームバーグの専用情報端末を利用し、債券分析やポートフォリオ分析を行っております。現在は数十世帯から数十億円の資産を仲介する証券口座で管理し、資産運用のアドバイスを行っております。

本日は「富裕層の資産運用(債券価格の決定要因)」についてお話させていだければと存じます。最後までご覧いただけましたら幸いです。

目次

債券価格の決定要因:金利

債券価格の決定要因として多くの方がご存じのようにまず金利が挙げられます。

・金利の種類について

・金利の上下と債券価格への影響

1.金利の種類について

そもそも金利といっても様々な金利が存在します。例えばどの国の金利なのかということです。米国の金利であるのか日本の金利であるのかということに注目する必要があります。

次に短期の金利であるのか長期の金利であるのかということも重要です。こういったことをしっかり定義づけしないまま、SNSでは「金利が低下して債券価格が上昇した。」といった書き込みが多くされているように思います。

それでは注目されることの多い金利とは具体的なにどのようなものでしょうか。代表的な金利指標としてはアメリカの中央銀行が利上げ、利下げを決める「政策金利」が挙げられます。

これは短期金利と呼ばれる非常に短い期間の金利水準を示す指標です。逆に米国長期の金利水準を示す指標を長期金利と呼び、代表的なものとして「米国10年国債」の利回りが挙げられるかと思います。

つまり「金利が上昇した」という言い方は非常に不正確なものであり、それが「どこの国の」の金利でかつ、「短期の」金利であるのか、「長期の」金利であるのかによってその影響は大きく異なってくることとなります。

そして日本の個人投資家に直接的に債券に影響を与えることが多いのは、一般的に米国の長期金利であると思われます。

なぜなら日本では米ドル建ての比較的満期の長い固定利付債を購入されている方が多く、そのような固定利付債は短期金利よりも長期金利の影響を受けやすいと考えられるからです。

2.金利の上下と債券価格への影響

では米国の長期金利が上下すると債券価格にどのような影響を与えるでしょうか。例えば10年満期のドル建て普通社債と米国10年債利回りの関係について考えたいと思います。

例えば米国10年債の利回りが4%のタイミングで、10年満期のドル建て普通社債Aの最終利回り(満期まで保有した場合の利回り)が5%であったとします。

ここで米国10年債の利回りが3%まで低下したとすると、普通社債Aの利回りはどうなると予想されるでしょうか?

一般的に(ドル建て普通社債の利回り)=(発行している会社の信用力に基づく利回り)+(同年限の米国債の利回り)と考えられています。

計算式からAという会社の信用力に変化がないと仮定すると、米国債の利回り低下を通じて、普通社債Aの利回りも低下することが分かります。

米国債の利回りが逆に上昇した場合も同様の考え方が出来ます。米国債の利回り上昇を通じてドル建て普通社債の利回りも上昇することが予想されます。

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債券価格の決定要因:信用力

先ほどの説明で、(ドル建て普通社債の利回り)=(発行している会社の信用力に基づく利回り)+(同年限の米国債の利回り)と考えられているとお伝えしました。

この章ではこの式における(発行している会社の信用力に基づく利回り)について確認していきたいと思います。

・信用力が上昇すると

・信用力が低下すると

1.信用力が上昇すると

「会社の信用力が上昇する」とは少しわかりにくい表現ですが、つまり会社の財務的な評価が上がると言った意味と考えて頂きたいと思います。

では会社の財務的な評価が上がった場合、その会社が銀行から借入れを行う際に要求される利息は増えるでしょうか、減るでしょうか。

答えは減ります。会社の財務的な評価が上がるということは、その会社が潰れにくくなったと評価されたということであり、潰れにくくなるということは、銀行側が求める利息は少なくて済むようになります。

債券についても基本的には同じ考え方が出来ます。つまり信用力が上がった会社の債券の(信用力に基づく利回り)は低下することとなり、利回りが低下するということは、債券価格には上昇圧力がかかることになります。

2.信用力が低下すると

先ほど同様に「会社の信用力が低下する」という表現について、会社の財務的な評価が下がると言った意味と考えていただければと思います。

会社の財務的な評価が下がった場合、その会社が銀行から借入れを行う際に要求される利息は増えることとなります。これは会社の財務的な評価が下がるということは、その会社が潰れる可能性が高まったと評価されているからです。

会社が潰れる可能性が高まった分、銀行が要求する利息水準も上昇することが通常です。同様の考え方が債券においても出来ると考えています。

つまり信用力が低下した会社の債券の(信用力に基づく利回り)は上昇することとなり、利回りが上昇するということは、債券価格には下落圧力がかかることになります。

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債券価格の決定要因:様々な業者の関わり

債券価格の決定要因として、様々な業者がかかわることで、最終的な投資家が売買する際の債券価格が変化することが挙げられます。

・債券取扱業者の意義と債券価格への影響

・債券取扱業者+証券会社が関わることの債券価格への影響

・債券取扱業者+証券会社+担当者が関わることの債券価格への影響

1.債券取扱業者の意義と債券価格への影響

債券取扱業者とはどのような存在でしょうか。債券取扱業者が存在しない場合、どのような不都合が投資家に起こるでしょうか。

例えば投資家が、ある会社の社債を購入したいと考えた場合、まず証券会社のラインナップを確認することとなります。そのラインナップすべてが証券会社が自己資金で保有している債券とは限りません。

ラインナップの一部は債券取扱業者が確保している在庫であり、債券取扱業者が存在しないとなれば、証券会社の債券ラインナップが減少することが想定されます。

また投資家が、アドバイザーを通じて証券会社の自己資金で保有していない債券の購入を希望した場合に、債券取扱業者が存在しないと、どのような問題が起こるでしょうか。

想像にはなりますが、証券会社の債券部がアドバイザーの依頼に基づいて、様々な手法を用いて直接マーケットから債券の売り手を探すことになるかと思います。結果的に余分な取引コストを投資家が負担する可能性が生じるかと思います。

このように債券取扱業者は売り手と買い手をつなぐ橋渡し役として存在します。その付加価値として、証券会社に債券を販売するタイミングで債券取扱業者が一定のコストを上乗せします。

結果的に投資家が購入する債券価格はそのコスト分だけ上昇することになります。

2.債券取扱業者+証券会社が関わることの債券価格への影響

次に証券会社がかかわることで、投資家が売買する債券価格にどのような影響を与えるのかについてお伝えしていきます。

一般的に投資家は証券会社を通じて債券を購入しますのでその役割は明確に思えます。一方で証券会社には債券購入の瞬間をお手伝いすること以外にも、さまざまな役割があります。例えば販売する債券を選定することです。

世の中には無数の債券があります。証券会社はその中から一般的な投資家が購入しても問題ないと考える債券をピックアップする役目を担っています。

次に購入に際して必要な書面の作成を行っています。コンプライアンスに則った債券書面を作成し、投資家に提供しています。

さらには債券保有後、利息を滞りなく証券口座へ入金させるための管理を行う、定期的に債券価格の評価を書面(電子書面)を通じてお伝えするなどの役割を担っています。

このような役目に対する対価として、債券取扱業者が提示する債券価格にさらに一定のコストを上乗せして、購入を希望する投資家に債券価格を提示しています。

このように、債券価格は様々な業者がそれぞれの役割に合わせたコストを債券価格に上乗せすることになるため、結果的に投資家が購入する債券価格に影響を与えていることとなります。

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